このくにのかたち(物理)

まちづくりやインフラの観点から日本について考察したい人間の雑記

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Dijkstra法のpythonでの実装

概要

 久しぶりにpythonをいじったので,リハビリがてらDijkstra法を実装しました.交通計画でも用いる基本的なアルゴリズムなので,ご参考ください.

Dijkstra法とは

 Dijkstra法(ダイクストラ法)は,最短経路探索の代表的な方法.リンクコストがすべて非負(0以上)のときに使える.
 ここでは詳細なアルゴリズム等については触れませんが,アルゴリズムの理解にはこちらのページが参考になります.
ダイクストラ法(最短経路問題)

pythonでの実装

対象ネットワーク

 ノード1を始点とする,下図のネットワークについてDijkstra法を適用します.
f:id:SooZy:20200606170830j:plain

ソースコード

# coding: utf-8 #おまじない

#--------------------------------------------------
#◆最短経路探索問題
#--------------------------------------------------

#◆ネットワークの作成--------------------
node = [1,2,3,4,5,6]
linkcost = {(1, 2) : 30,
            (1, 3) : 25,
            (2, 3) : 40,
            (2, 4) : 35,
            (3, 5) : 15,
            (4, 6) : 45,
            (5, 4) : 10,
            (5, 6) : 40}
#{(リンクの起点,リンクの終点):旅行時間}で表される有向リンクのdictionary.
link = list(linkcost.keys()) #linkcostのkeyからリンクのlistを生成.


#◆変数の準備----------------------------
startnode = 1 #始点ノード
inf = 999 #距離無限大を意味する,十分に大きな数
dist = {} #そのノードまでの距離を表す変数をdictionaryで用意
prev_node = {} #あるノードに最短経路で向かう際の直前のノード

#distに初期値を与える
for i in node:
    dist[i] = inf #初期値は距離無限大
dist[startnode] = 0 #始点のみ距離0

#undecided_distを定義する.
undecided_dist = dist.copy() #最短距離が未確定のノードとその距離.
 #辞書関数はミュータブルなオブジェクトのため,copy()メソッドを用いて複製する.

#prev_nodeに初期値を与える
for i in node:
    prev_node[i] = None


#◆本計算-------------------------------------
while undecided_dist: #最短距離が未確定のノードがなくなるまで繰り返す.
    u = min(undecided_dist, key=undecided_dist.get) #最短距離が未確定のノードのうち,距離が最小のノードを取り出す.
    del undecided_dist[u] #取り出したノードは未確定のノードから削除.
    for i in range(len(link)): #各リンクについて,
        if link[i][0] == u: #リンクの起点が,今取り出しているノードである場合,
            v = link[i][1] #リンクの終点に関して,その点までの距離を確認していく.
            if (dist[v] > dist[u] + linkcost[u,v]): #当該リンクを利用した経路の方が短い場合,
                dist[v] = dist[u] + linkcost[u,v] #距離を修正.
                prev_node[v] = u #そのノードに最短経路で向かう際の直前のノードを修正.


#◆出力---------------------------------------
print('answer =',dist)
print('prev_node =', prev_node)

結果

answer = {1: 0, 2: 30, 3: 25, 4: 50, 5: 40, 6: 80}
prev_node = {1: None, 2: 1, 3: 1, 4: 5, 5: 3, 6: 5}

ポイント

 今回はリンクコストを辞書形式とし,キーをリンクを表すタプル,値をリンクコストとした.これは,個人的に慣れていた表記で,見やすいという理由から.(あまり見かけない表記?)
 なお,今回のコードはオリジナルと呼ばれる,計算量がO(V^2)のもの.ヒープキューを用いることで,計算量を少なくする方法もあるので,計算速度を上げる必要がある場合はそちらを参照のこと.
 
 プログラミングについては初学者なので,もし間違い等あればご指摘ください.

配分交通量の推計

交通量の配分

 交通需要予測のための4段階推計法においては,配分交通量(assigned traffic volume)を推計する必要がある.配分交通量の推計とは,交通機関別の分担交通量を各経路に割り振り,リンク交通量を得る作業をいう.

交通量配分における基準

 交通量の配分にあたっては,何らかの基準が必要である.よく使われる基準として,Wardrop(ワードロップ)が提唱した2つの原則がある.

Wardropの第1原則

 利用される経路の旅行時間はみな等しく,利用されない経路の旅行時間よりも小さいかせいぜい等しい. 

 経路の旅行時間に着目した表現になっているため少々わかりづらいが,これは経路の利用者が,完全情報化において自らの経路選択を最適化を目指した場合に到達する均衡状態を表している.すなわち,利用者の視点で,最短の経路を選択した場合である.これは,利用者均衡(User Equilibrium, UE)と呼ばれる.

Wardropの第2原則

道路ネットワーク上の総旅行時間が最小となる. 

  ここで,総旅行時間とは,利用者個々人の旅行時間を総和したものである.第2原則は,システム全体の最適化を目指した場合である.管理者の視点での経路選択基準ともいえる.これは,システム最適(System Optimum, SO)と呼ばれる.

その他の基準

 なお,これらのWordropの原則以外にも,確率的に経路を選択する基準もある.

リンク費用関数

 リンクの旅行時間が,常に一定であれば,すべての交通需要は同一の最短経路を選択するので,交通量配分はそれほど難しくない(All or Nothing配分).しかし,道路ネットワークなどにおいては,リンク交通量が増加すると,混雑が発生し,リンク旅行時間が増加すると考えるのが自然だ.

 このように,リンク交通量によってリンク費用が変化することをFlow-dependentという.反対に,リンク費用がリンク交通量に依存しない場合は,Flow-independentという. 

参考文献

交通計画学 (土木・環境系コアテキストシリーズ)

交通計画学 (土木・環境系コアテキストシリーズ)

 
交通流理論―流れの時空間変化をひも解く

交通流理論―流れの時空間変化をひも解く

 

 

【読書録】日本の地方政府 1700自治体の実態と課題

はじめに

当たり前のようだが,日本の行政は中央政府地方自治体から成り立っている.

おおよそのイメージとして,中央政府(国)が国家全体の政策を決め,地方自治体(都道府県・市町村)は各地域で個別に政策を実行している,というような認識が一般的だろう.

だが,金銭や制度の面でどのような関係性となっているのか,また組織の性格としてどのような違いがあるのか,正確に理解している方は多くはないのではないだろうか.

そこで今回手に取ったのがこの本.

日本の地方政府-1700自治体の実態と課題 (中公新書)

日本の地方政府-1700自治体の実態と課題 (中公新書)

 

 

概要

要約

地方政府(地方自治体/地方公共団体)は,支出において国の2.5倍,人員において4.7倍の規模であり,あらゆる人の生活は,地方政府の活動によって支えられている.しかし,地方政府は,一方では国からの影響を,他方では地域の社会や経済からの影響を受ける複雑な構造であり,また,多様性に富んでいるため,理解するのが難しい.地方政府を理解するため,「政治制度」「中央・地方関係」「地域社会・経済の関係」の3つの観点から現代日本の地方政府の実態を描き出す.

目次

序 章 地方政府の姿――都道府県・市町村とは

第1章 首長と議会――地方政治の構造

第2章 行政と住民――変貌し続ける公共サービス

第3章 地域社会と経済――流動的な住民の共通利益

第4章 地方政府間の関係――進む集約化,緊密な連携

第5章 中央政府との関係――国家との新たな接続とは

終 章 日本の地方政府はどこに向かうか

 

得られた知識

本を読んで知った知識です.備忘録として.

税財政制度

・地方政府の税収は40兆円弱だが,歳入は国からの大規模な財政移転が行われている(約30兆円).そのため,歳出の総額は71.3兆円ほど.(国の歳出は45.2兆円)

・財政移転は,地方交付税補助金の二本立てになっている.地方交付税は使途に制限がなく,補助金は使途が限定されている.

都道府県の役割

1.国の政策を実施する機関の役割

2.市町村よりも広域を所管する地方政府の役割(広域事務)

3.市町村を指導し助ける役割(連絡調整事務・補完事務)

中央政府と地方政府の関係

1.地方政府の政治・行政に不足がある場合,中央政府がそれを補完・代行する.

2.中央政府の政策の実施を,地方政府に委任する.

3.政策で利益を受ける地域と負担を背負う地域の間にズレがあり,調整を行う場合.

 

感想

著者の主観は控えめに,多数の引用を用いながら淡々とした語り口で,教科書的に地方政府の実態を網羅している.非常に勉強になった.

以下,特に印象的だった箇所を紹介する.

企画部門は「ホッチキス部門」?

 一九六〇年代に入ると,五ヵ年計画や長期計画などの計画を立案したうえで,行政を展開する傾向が強まった.(中略)そうしたなかで,長期計画の策定にあたる企画部門が成立していく.首長のトップ・マネジメントも企画部門を通じて実施されることが期待された.

 しかし,それが実現したとは言いがたい.計画の策定自体が自己目的化しがちだったからだ.理念から実現手段までの明確な構想がない限り,トップダウンで計画を立案し,詳細化・具体化していくことは容易ではない.企画部門は,「ホッチキス部門」と揶揄され,ボトムアップで各部署が出してきた計画を束ねる存在に終わることも多い.(第2章,p.68)

 理想的な姿は,明確な長期計画を策定し,それに則って各事業部署で施策が実施されていくことだろうが,実際はそうは動かない.私見ではあるが,たいてい,企画部門と事業を実施する部署は分かれているので,まず調整を取ることに一つハードルがある.各部署の事業内容を詳細に把握し,綿密に調整を取れるような相当優秀な人員が企画部門にでもいない限り,理想的な姿を実現するのは難しいというところだろうか.

 今まさに人口減少社会の入り口に立ち,一つの転換期を迎えようとしている.この中で地方政府は,地域はどうあるべきか,どのように施策の舵取りをすればよいか,その地域の特色を出した明確な計画を策定し,それを実行していくことが必要になってくる.計画の実行については,本書では政策法務(条例の制定など)により政策形成を図る動きも紹介されている.まず計画が明確な方向性をもって策定されているか,そして策定の後にしっかりと実施されていく仕組みづくりができているか,その2点を考えることが計画が自己目的化しないようにするうえで重要だといえるだろう.

規制の弱い都市計画とコンパクト・シティ

 開発政策と福祉政策の双方で大きな役割を果たすのは,日本の地方政府の政策の特徴といえる.しかし裏面で,他国では地方政府の政策の中心であるのに,日本ではそうでもない政策もある.都市計画やまちづくりがそれであった.(第3章,p.123) 

 日本の都市計画の特徴は,規制の緩やかさである.区域指定や地域指定の内容があまり詳細ではなく,細かな規制をかけにくい.このため,開発を抑制すべき区域内で実際には開発行為が進むことも多い.市街化調整区域でも種々の抜け穴があり,開発がなし崩し的に進む.(第3章,p.132)

 縮小が進むなかで,安全性の高い地域だけを高度利用することはたしかに望ましいだろう.しかしそれには,危険性の高い土地の利用を禁止するとともに,土地の保有コストを高め,空き家やシャッター商店街を解消する施策をセットにする必要がある.このような土地所有者の利益に合わない選択を首長や地方議員が行うことは難しいだろう.現在の日本の地方政府の一つの帰結が,現在の日本の街並みなのである.(第3章,p.133) 

 日本の都市計画は他国と比べて規制が弱いというのは,よく言われる話である.これは,土地所有者の経済的利益を重視し,土地の無秩序な利用による社会への負の外部性の影響を軽視してきた結果であろう.一方で,人口減少の時代では,コンパクトなまちづくりが望まれ,その実現のためには規制の弱いこの都市計画制度にメスを入れる必要性は高まっている.

 だが,本書では,首長や地方議員がそれを実行するのは難しいとしている.それでも果敢にこの問題に取り組む首長等が現れるのか? あるいは国からトップダウン的に働きかけるのか? いずれにせよ,土地所有者からの反発を呼びかねないこの苦しい選択に取り組んでいった地方政府こそが,次世代のコンパクトなまちづくりを達成できるのではないだろうか?

東京/三大都市圏とそれ以外の地域での対立

 第3章から第5章で示した問題は,つまるところ,地域間の対立軸が東京とそれ以外,あるいは三大都市圏とそれ以外に存在しているが,東京ないし三大都市圏とそれ以外の間の利益調整や再分配をどの程度行うのかという問題を,国政で正面からとりあげていないところにある.(終章,p.239-240)

 東京一極集中などの問題を考えれば,この件は日本の在り方に関わる根深い問題だ.本書では,この問題の解決を地方での政党制の確立に求めている.地方政治が有効に機能して地域の利益を守るために声をあげなければ,東京と地方の格差は開く一方だろう.

人口の質的側面

 実際には人口という量的側面では計り知れないものが,地方政府の住民には存在する.年齢構成などはもちろんのこと,日常活動をどこで行うのかもその一つである.人口以外にも見るべき要素はいくつもあるはずだ.(終章,p.242) 

  自戒すべき点なのだが,私は何かと自治体の規模を知ろうとしたときにまず人口をチェックし,おおよその自治体の規模感をつかんで知ったような気になっていたことが往々にしてあった.人口の大小も自治体を知る一面であることに代わりはないだろうが,人口の質的側面など,それ以外の視点からも考察することを心がけたい.

 

おわりに

 地方政府の役割や,財政・制度の実情など,あいまいな理解だったものが,本書を通して多少なりとも頭の整理ができた.そして,地方政府の抱える構造上の課題というものも把握できた.人口減少の時代における今後の地方の在り方は,地方政府の施策によるところが大きいと考えており,地方政府の重要性は増してくると考えている.地方政府がこうした課題を乗り越えて,未来の地域像を描き,実現していくことを期待している.

都市及び地方計画のまとめ【技術士第一次試験(建設部門)対策】

技術士第一次試験(専門科目:建設)における「都市及び地方計画」の対策用のまとめページです.問題を解くために特に必要な知識に絞って掲載しています.詳細についてはリンク先をご参考ください.随時更新予定.

 

都市計画

都市計画:都市計画制度の概要 - 国土交通省

1.都市計画区域(出題:H29, H28)

都市計画区域

都市計画の対象となる地域のこと.中心市街地を核とし,一体の都市として総合的に整備,開発又は保全すべき区域.都市計画区域を指定すると,都市計画の決定,都市施設の整備,市街地開発事業の施行等を行うことができる.

区域区分(線引き)

市街化区域市街化調整区域との区分を定めること.都市計画区域について無秩序な市街化を防止し,計画的な市街化を図るために必要がある場合に定める.

〇市街化区域
・すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図る地域

〇市街化調整区域
・市街化を抑制すべき区域

 

2.地域地区(出題:H30, H28)

・用途の適正な配分,都市の再生の拠点整備,良好な景観の形成等の目的に応じた土地利用を実現するために設定する地域又は地区
・地域地区には,代表例である用途地域をはじめ,特別用途地区,高度地区,観地区,臨港地区等,多数の種類がある

用途地域

市街化区域の全域に対して指定することになっている.平成29年の「都市緑地法等の一部を改正する法律案」の閣議決定により田園住居地域が加えられ,計13種類となった.
都市計画:土地利用計画制度の概要 - 国土交通省

〇特別用途地区

用途地域を補完する地域地区で,地域の特性にふさわしい土地利用や,環境の保護など,特別の目的の実現を図るために指定される.

 

3.都市施設(出題:H27)

 

交通計画

1.都市交通の調査(出題:H28, H26)

〇パーソントリップ調査

OD調査のうち,人を対象としたもの.交通行動の起終点,目的,利用手段を把握できる.

〇道路交通センサス

正式名称を「全国道路・街路交通情勢調査」と言う.以下の二つに大別される.
 ・一般交通量調査:交通量・旅行速度などの実測
 ・自動車起終点調査:アンケート調査等

〇大都市交通センサス

首都圏,中京圏,近畿圏において,鉄道,バス等の大量公共交通機関の利用実態を調査するもの.昭和35年以来5年ごとに実施している.

国勢調査

日本に住んでいるすべての人および世帯を対象として,国内の人口や世帯の実態を明らかにするため,5年ごとに行われる.従業地又は通学地等を把握することができる.

〇物資流動調査

主に物の動きとそれに関連する貨物自動車の動きを調べるもの.品目別の地域間流動を把握することができる.

 

2.公共交通(出題:H30, H27)

LRT(Light Rail Transit,次世代型路面電車システム)

低床式車両の活用や軌道・電停の改良による乗降の容易性,定時性,速達性,快適性などの面で優れた特徴を有する次世代の軌道系交通システム.
道路:LRT(次世代型路面電車システム)の導入支援 - 国土交通省

〇BRT(Bus Rapid Transitバス高速輸送システム

連接バス,PTPS(公共車両優先システム),バス専用道,バスレーン等を組み合わせることで,速達性・快適性の確保や輸送能力の増大が可能となる高次の機能を備えたバスシステム.
自動車:BRTの導入促進等に関する検討会 - 国土交通省

3.空間平均速度の計算(出題:R1再,H28)

こちらの記事で解説しています.

国土計画

国土計画:国土計画の歩みに関する資料 - 国土交通省

全国総合開発計画等の変遷(出題:H29)

〇1962年:全国総合開発計画全総

・基本目標「地域間の均衡ある発展」

・開発方式「拠点開発構想」:工業の分散

〇1969年:新全国総合開発計画新全総

・基本目標「豊かな環境の創造」

・開発方式「大規模プロジェクト構想」新幹線,高速道路等のネットワークの整備

〇1977年:第三次全国総合開発計画三全総

・基本目標「人間居住の総合的開発の整備」

・開発方式「定住構想」大都市への集中を抑制する一方,地方を振興

〇1987年:第四次全国総合開発計画四全総

・基本目標「多極分散型国土の構築」

・開発方式「交流ネットワーク構想」

〇1998年:21世紀の国土のグランドデザイン

・基本目標「多軸型国土構造形成の基礎づくり」

・開発方式「参加と連携」多様な主体の参加と地域連携による国土づくり

〇2008年:国土形成計画
〇2014年:国土のグランドデザイン2050

 

国土形成計画(出題:H30)

国土総合開発法国土形成計画法への改正(平成17年(2005年))

【背景】

 開発を基調とし量的拡大を指向した国土総合開発計画から,国土の質的向上を図るため利用と保全を重視した計画への転換

【名称,目的の改正】

 【国土形成計画の体系】

  • 「全国計画」と「広域地方計画」の二段階の計画制度から成る
  • 都府県総合開発計画,地方総合開発計画,特定地域総合開発計画は廃止

 

 

参考資料

・ガチンコ技術士学園 浜口智洋「過去問7年分+本年度予想 技術士第一次試験 建設部門対策 ’19年版」,2019.1.1 第1版第1刷

更新履歴

・2020/1/19 ページ作成

・2020/1/21 追記

・2020/1/26 追記

・2020/8/20 空間平均速度の計算について追記

【読書録】ネットは社会を分断しない

今回紹介する本はこちら.

f:id:SooZy:20191208125132j:plain

「ネットは社会を分断しない」(田中辰雄・浜屋敏,角川新書,2019.10.10初版

 

 あなたは世の中のニュースをどうやって情報収集しているだろうか.

 私は普段,テレビや新聞はほとんど見ない.朝と夜に時間が合えばNHKを見るくらいだ.世の中のニュースはTwitterやニュースアプリで主に情報収集している.
テレビで興味のないニュース(スポーツ,芸能etc...)にも時間を費やすのは苦痛だ.新聞に至っては購読料がかかるわ,荷物にすれば嵩張るわ,読もうとすれば場所をとるわでメリットを見出すことが難しいくらいだと思っている.

 だが,この情報収集の仕方は健全なのかと,ふと疑問に思うことがしばしばある.Twitterでは自分の考えに近い人をフォローしがちだし,ニュースアプリでは自分の興味のある記事ばかりを選んで読んでしまいがちだ.自分の得る情報に偏りが出てしまうのではないか,そしてそれが自分に偏った思想を植え付けることになるのではないかと,不安に思うことがある.

 そしてその不安を加速させるのが,Twitterで見かける政治や思想に関する議論だ.Twitter上では,いわゆる「右翼」と「左翼」の過激な意見が飛び交い,互いを論破しようとしている.これらはたいてい建設的な議論ではなく,論点が噛み合わずに誹謗中傷のやりとりとなっている.こうした議論を見ているうちに,自分の思想も偏った,不寛容なものとなってしまうのではないかと思わせる.

 近年,社会的な対立は深刻化しているように思える.世界においてはアメリカでのトランプ大統領の登場や,イギリスのBrexitEU諸国の右翼政党の台頭など,各国内を二分するような議論を巻き起こした事例に事欠かない.
 日本国内においては,憲法9条原子力発電,モリカケ問題などが記憶に新しいだろうか.

 なぜ近年こうした対立が多いのか?これらの対立の根底にあるのは,前述のTwitterでの議論のように,人々がネットを使って情報を入手・発信することができるようになったことの結果なのだろうか? ネットは人々の意見を過激化するのか? つまり,ネットは社会を分断させてしまうのか?――この疑問に答えようとするのが本書である.

 

【要約】

 「ネットによって社会は分断されていくのではないか」という悲観論がある.この悲観論が事実かどうか調べるために,筆者らは10万人規模のアンケート調査を実施した.アンケート調査からわかったのは,①ネットで接する相手の4割は自分の意見と反対の意見の持ち主であり,人々はむしろネットを使うほど穏健化する傾向にあること,②ネットは偏った過剰な意見が閲覧されやすい特性があり,真の世論を反映していないこと.――つまり,「ネットは社会を分断しない」という事実が明らかになった.(228字)

 

【構成】

第1章:分極化の進行について
 ・ネットで見られる不毛な言い争い
 ・米国や日本で示唆される分極化の進行
 ・ネット原因説の登場

第2章:ネット原因説の根拠について
 ・選択的接触:人が情報に接するとき,自分の考えに近い情報を選ぶこと
  →エコーチェンバー(残響部屋)現象が起こり,過激化する懸念
 ・パーソナルメディア化:新規参入コストが低く個人でも情報発信が可能
  →既存のメディアよりも極端な主張が行われやすい
 ・ネット利用者は非利用者より分極化している

第3章:ネット原因説との矛盾
 ・日・米ともに,分断が進んでいるのはネットを使わない中高年

第4章:ネットは社会を分断していない
 ・元々強い主張を持っている人がネットメディアを利用している(因果が逆)
 ・ネットの利用により過激化するわけではない
 ・むしろネット利用後には穏健化する傾向にある(特に若年層)
 ・元々強い意見の持ち主だった人がTwitterを使った場合にのみ過激化する傾向

第5章:選択的接触の真実
 ・ネットで接触する相手の約4割は自分と反対の意見を持つ人である
  →エコーチェンバーは起こりそうにない
 ・選択的接触はテレビ・新聞の方がやや強い
  →テレビ・新聞と異なり,ネットでは反対意見もノーコストで取得可能なため
 ・両側の意見を聞くと穏健化する

第6章:ネットで見える世論と真の世論
 ・ネットでないなら,何が社会を分断しているかについては議論しない
 ・閲覧される意見が偏っているため,ネットでは極端な意見が目立つ
  →ネットで見える世論は真の世論ではない

【感想】

 本書は10万人規模のアンケート調査の結果をもとにした計量分析と,既存の研究結果から「ネットは社会を分断するか」という命題にアプローチしている.構成はさながら論文のようで,分析の手法を専門的になりすぎない範囲で明示しつつ,データ分析から導き出される結果に基づいて論が構築されていく.結論ありきではなく,結論がわからないところからスタートし,分析や考察の妥当性を,想定される反論についても慎重に検討をした上で結論を導き出した雰囲気が伝わってきて非常に好印象だった.

 導き出された結論はタイトルの通り「ネットは社会を分断しない」だ.第2章を読んでいたあたりでは,ここから何がどうなれば「社会を分断しない」結論に導かれるのかハラハラしていたが,読み終われば見事に一貫した論となっており,「社会を分断しない」という事実を受け入れざるを得ない.

 気になった点としては,本書内でも指摘されていたが,ネットメディアの種類によって異なる結果が得られている箇所があり,その部分の検討については今後の研究に期待したい.

 また,気を付けなければならないのは,ネットが原因ではないにせよ,社会の分断は起きていることが示唆されている点だ.ネットの世論が実際の世論と異なることには十分に注意しつつ,その点を踏まえて今後もネットメディアを賢く利用していきたい.

 

【印象的だったフレーズ】

 これに対し,ネットメディアは新規参入のハードルが非常に低い.ブログを立ち上げれば論理的には世界中の人に配信が可能であるし,YouTubeでの配信,あるいはツイッターでつぶやいても世界に届く.(中略)
 そして,メディアのパーソナル化の帰結は,新規参入メディアが増え,その結果政治的に極端な主張を行うメディアがたくさん現れたことである.(p.60)

  私は基本的に,従来の大手マスメディアに猜疑心があった.一方的に情報を発信するという特権的な立場にあり,そのくせ一般人を代表しているかのような報道をするのは,ともすれば世論を誘導しているかのように感じていたからだ.それに対し,近年SNSなどの普及により,一般人でも情報を発信できるようになったことは,情報発信が特権的なものでなくなったという意味で,基本的に肯定的に感じていた.

 だが,ここで指摘しているのは,従来の大手マスメディアは視聴者獲得競争の結果,比較的穏健な政治傾向に均衡してきたのに対し,ネットメディアは発信のコストが少なく,少数の読者を獲得できれば十分なため,大手との競合を避けた層を狙い,結果として強い主張がされがちだということだ.

 これは注意しておくべきことだろう.ネットメディアは従来のマスメディアが報道しない角度から情報を発信するという利点はあるものの,その過激な主張を鵜呑みにすることは思想的な偏りが生じかねない.もともとネットの情報を信用しすぎるなという論調はよく聞くものではある.結局のところ,我々ネットメディアの利用者に求められているのは,その主張の反対派の意見を意識的に見る,広範に情報を収集するなどして,より賢くネットメディアと付き合っていくということだろう.

 

 この問題が深刻なのは,自由と民主主義が矛盾する構図になっていることである.ネット上で自由な言論活動を許せば,社会の分断が起こり民主主義が機能不全を起こす.では自由を制限するのか? しかし,言論の自由と民主主義は本来互いに強めあうものだったはずである.自由な言論あってこそ民主主義であり,民主主義は自由を励ますものだった.その自由と民主主義が矛盾するとすればどうすればよいのか.(後略)(p.79-80) 

  引用の文中において,冒頭の「この問題」とは,自由な言論によって引き起こされる社会の分断のことを指している.また,民主主義については,社会の分断(分極化)が進みすぎると,①議論によって政策案を改善していくという努力が放棄されること,②相手の言うことが理解できないため,民主的意思決定自体に疑念を持つようになること,が起こり,民主主義が機能不全になることが本書中でも指摘されている(p.37-40).

 正直,私は近年の社会の分断――トランプ大統領の登場やBrexit憲法9条の問題――を見て,民主主義にも限界が来ているのではと疑念に思っていた.ネット上では,「自由な言論」の大義名分のもとに罵倒と中傷の議論が繰り返されている.この生産的ではない議論の中で世論が形成してしまうのではないか,ともすればこれがいわゆる衆愚政治へ繋がってしまうのではないかと危惧したからだ.
 当然ながら,独裁を肯定するつもりも全くない.しかし,何か新しい政治システムが必要なのではと思っていた.

 だが,本書が示したのは,ネットでは過激な意見が閲覧されやすいだけであり,ネットの世論が真の世論と思ってはいけないということ,そしてむしろ人々の意見はネットの利用によって穏健化しているという事実だ.本書はネット利用のみならず,民主主義にとっても希望となるものだと思った.

 

(前略)人間は一方的な情報には警戒心をいだき,やすやすとはのらない.自分の意見と反対側の意見を並列して比べ,そのうえで自分で考えて納得した時にだけ人は意見を変える.(後略)(p.190-191) 

 個人的になるほどと思った箇所.参考として紹介されていた米国での実証実験の結果に関する記述である.実験では,賛成・反対の一方的な情報を聞くよりも,両側の意見を聞いた場合にのみ意見に変化が生じ,穏健化したことが明らかになったという.

 本書の趣旨とは関係のないところではあるが,他人に何か話をして,自分の意見に同意をしてもらいたいとき,反対の意見として考えられる事項にも言及することの重要性を示していると感じた.一方の側の情報のみを与えても人々は心理的に反発をしてしまうものであり,賛成・反対の両意見を踏まえた上での主張が最も他人の考えを動かす.これは意識して実践していきたいと思った.

 

 

都市圏人口で都市を見る ~大都市雇用圏人口ランキング~

都市圏人口とは

 都市の規模を計る指標として,人口がよく用いられる.しかし人口は市町村ごとに集計されることが多く,都市規模の実態を正確に表せないこともしばしばある.

  そこで用いられるのが,都市圏人口である.都市圏は,中心都市と、それと社会的・経済的に密接な関係を有する周辺地域、すなわち郊外、によって形成される。

 ここで問題となるのが都市圏の定義であるが,日本では金本良嗣らが提案した「都市雇用圏(UEA, Urban Employment Area)」が都市経済学等で標準的に用いられている.

 都市雇用圏は,
 (1)中心都市をDID(Densely Inhabitat District, 人口集中地区)人口によって設定し、
 (2)郊外都市を中心都市への通勤率が10%以上の市町村とし、
 (3)同一都市圏内に複数の中心都市が存在することを許容する
都市圏設定である。

 特に,中心都市のDID人口が5万人以上の都市圏を大都市雇用圏(MEA, Metropolitan Employment Area)と呼び、1万人から5万人のものを小都市雇用圏(McEA, Micropolitan Employment Area)と呼ぶ。

 

大都市雇用圏人口ランキング(2015)

 2015年基準の大都市雇用圏人口が多い順に都市圏を並べてランキングにしたものを,下記の表に示す.なお,データはすべて 都市雇用圏-Urban Employment Area- より引用している.

 表の右側には,大都市雇用圏人口と中心都市人口の比をとった値を入れている.この値が大きいほど行政単位の人口と実際の都市規模の乖離があるということである.三大都市圏でこの値が大きいことは驚くべきことではないが,ここで着目すべきはむしろ地方都市である.

 この値が最も大きいのは37位の甲府市である.中心都市人口が約19万人であるのに対して,都市雇用圏人口は59万人近くと,中心都市の3倍以上の値となっており,複数の市町村と一体となって規模の大きな都市圏を形成していることがわかる.

 また,LRTの導入等のコンパクトシティ政策で注目される富山市は,中心都市人口は約42万人であるが,都市雇用圏人口で見ると100万人超の大都市であり,政令指定都市新潟市静岡市などを押さえ16位に位置している.富山市コンパクトシティ政策は地方の中規模都市の事例として捉えられがちだが,都市雇用圏人口で見た場合との規模のギャップには注意が必要であろう.

  

 このように,市町村単位との人口と都市圏人口には大きなギャップが存在し,都市の実態を計れないことがままある.都市の実際の規模を知るためには,行政界単位の人口のみではなく,都市圏人口についても確認することが必要である.

 

順位 都市圏名 ①大都市雇用圏人口 ②中心都市人口 DID人口 ①/②
1 東京 35,303,778 17,255,397 9,272,740 2.05
2 大阪 12,078,820 4,156,855 2,690,732 2.91
3 名古屋市・他 6,871,632 3,007,857 2,250,106 2.28
4 京都市草津市 2,801,044 1,612,430 1,407,087 1.74
5 福岡市 2,565,501 1,538,681 1,486,479 1.67
6 神戸市 2,419,973 1,537,272 1,443,793 1.57
7 札幌市・小樽市 2,362,914 2,074,280 1,899,081 1.14
8 仙台市 1,612,499 1,082,159 1,001,882 1.49
9 岡山市 1,526,503 719,474 492,936 2.12
10 広島市 1,431,634 1,194,034 1,027,439 1.20
11 北九州市 1,314,276 961,286 864,534 1.37
12 前橋市高崎市 1,263,034 707,038 196,540 1.79
13 浜松市 1,129,296 797,980 475,253 1.42
14 熊本市 1,111,596 740,822 587,816 1.50
15 宇都宮市 1,103,745 518,594 385,594 2.13
16 富山市 1,066,328 418,686 235,868 2.55
17 新潟市 1,060,013 810,157 590,688 1.31
18 静岡市 988,056 704,989 621,501 1.40
19 つくば市土浦市 843,402 367,767 74,124 2.29
20 那覇市浦添市 830,532 433,667 318,151 1.92
21 岐阜市 823,219 406,735 286,484 2.02
22 高松市 819,327 420,748 212,897 1.95
23 長崎市 785,108 429,508 314,082 1.83
24 姫路市 773,389 535,664 390,211 1.44
25 福山市 753,528 464,811 265,448 1.62
26 金沢市 747,780 465,699 387,341 1.61
27 大分市 737,936 478,146 342,769 1.54
28 鹿児島市 724,236 599,814 482,548 1.21
29 水戸市 687,734 270,783 172,333 2.54
30 豊橋市 670,144 374,765 265,822 1.79
31 徳島市 659,744 258,554 186,426 2.55
32 福井市 646,813 265,904 177,268 2.43
33 松山市 637,608 514,865 429,624 1.24
34 四日市市 623,210 311,031 217,294 2.00
35 太田市大泉町 613,825 261,009 83,094 2.35
36 長野市 589,549 377,598 255,665 1.56
37 甲府市 586,986 193,125 154,036 3.04
38 和歌山市 569,758 364,154 275,582 1.56
39 郡山市 544,662 335,444 240,314 1.62
40 山形市 534,571 253,832 180,878 2.11
41 高知市 519,390 337,190 271,698 1.54
42 宮崎市 502,401 401,138 278,193 1.25
43 津市 499,709 279,886 133,801 1.79
44 沼津市 497,258 195,633 164,605 2.54
45 豊田市 484,352 422,542 244,914 1.15
46 盛岡市 470,414 297,631 237,280 1.58
47 福島市 451,044 294,247 192,047 1.53
48 松本市 447,802 243,293 146,481 1.84
49 久留米市 431,897 304,552 188,031 1.42
50 佐賀市 398,217 236,372 139,012 1.68
51 秋田市 397,801 315,814 250,569 1.26
52 旭川市 388,701 339,605 313,661 1.14
53 富士市 387,236 248,399 198,008 1.56
54 長岡市 356,767 275,133 132,473 1.30
55 いわき市 350,237 350,237 173,057 1.00
56 日立市 349,111 185,054 154,590 1.89
57 函館市 340,489 265,979 229,488 1.28
58 成田市 328,796 131,190 80,812 2.51
59 沖縄市 327,550 139,279 122,197 2.35
60 八戸市 324,451 231,257 156,053 1.40
61 大垣市 313,740 159,879 93,199 1.96
62 山口市 313,364 197,422 99,468 1.59
63 青森市 310,640 287,648 224,677 1.08
64 佐世保市 298,023 255,439 152,157 1.17
65 弘前市 291,789 177,411 119,063 1.64
66 松江市 284,790 206,230 105,360 1.38
67 下関市 268,517 268,517 176,520 1.00
68 周南市 267,340 144,842 88,865 1.85
69 帯広市 263,344 169,327 151,189 1.56
70 呉市 252,891 228,552 156,083 1.11
71 都城市 236,290 165,029 63,366 1.43
72 大牟田市 234,581 117,360 96,981 2.00
73 鳥取市 232,610 193,717 100,756 1.20
74 宇部市 232,100 169,429 89,846 1.37
75 米子市 231,746 149,313 77,543 1.55
76 上越市 230,186 196,987 82,507 1.17
77 新居浜市 228,077 119,903 86,704 1.90
78 会津若松市 223,807 124,062 87,065 1.80
79 東広島市 219,333 192,907 51,311 1.14
80 小山市 218,354 166,760 98,014 1.31
81 三条市燕市 215,037 178,976 50,608 1.20
82 古河市 212,776 140,946 50,088 1.51
83 釧路市 205,177 174,742 156,092 1.17
84 石巻市 193,051 147,214 79,059 1.31
85 苫小牧市 190,477 172,737 142,348 1.10
86 室蘭市 189,696 88,564 69,665 2.14
87 伊勢市 183,793 127,817 58,359 1.44
88 千歳市 173,498 95,648 80,072 1.81
89 岩国市・大竹市 170,907 164,622 66,466 1.04
90 栃木市 159,211 159,211 56,831 1.00
91 今治市 158,114 158,114 58,795 1.00
92 八代市 157,127 127,472 55,162 1.23
93 酒田市 142,117 106,244 58,133 1.34
94 鶴岡市 137,380 129,652 58,040 1.06
95 彦根市 135,495 113,679 64,905 1.19
96 北見市 126,326 121,226 80,955 1.04
97 延岡市 125,159 125,159 82,178 1.00
98 島田市 105,304 98,112 51,478 1.07
99 舞鶴市 94,586 83,990 58,260 1.13
100 蒲郡市 81,100 81,100 56,140 1.00

 

参考:

・都市雇用圏-Urban Employment Area- http://www.csis.u-tokyo.ac.jp/UEA/uea_data.htm

・金本良嗣・徳岡一幸,「日本の都市圏設定基準」 ,『応用地域学研究』No.7, 1-15, (2002) http://www.csis.u-tokyo.ac.jp/UEA/UEADef.pdf

都市雇用圏 - Wikipedia

 

【読書録】学びを結果に変えるアウトプット大全

今回読んだ本はこちら.

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「学びを結果に変えるアウトプット大全」(樺沢紫苑,2018.08.03初版)

本屋でもよく平積みにされているので見かけたことがある方も多いだろう.

 

『アウトプット』.そもそも私がブログを始めようと思った理由も,自分のアウトプット力を高めたいと思ったからである.ほんっっっっとうににアウトプットすることが苦手なため,何かヒントになることがあればと思い本書を手に取った.2時間もかからずにサクッと読めたので,早速アウトプットしていこうと思う.(というかこの本を読んでもアウトプットができなければ負けでは?)

 

【要約】

 インプット量だけを増やしても記憶として定着しないため,自己成長できない.自己成長をするために重要なのはインプットの量ではなく,アウトプットの量である.また,インプットでは「脳内世界」が変化するだけだが,アウトプットすることで「現実世界」を変えることができる.本書では「話す」「書く」「行動する」のアウトプットについて80の実践方法を紹介するとともに,アウトプット力を高める7つのトレーニング方について紹介する.(204字)

 

【感想】

 本書ではインプットとアウトプットの黄金比は3:7であるとしている.自分の感覚では最適な比率は7:3程度だと思っていたので,この比率にはとても驚いた.

 第2章~第4章ではアウトプットの80の実践方法について紹介されているが,中には「謝る」「笑う」「眠る」など,これは一般的にいう「アウトプット」の部類か?と感じるものや,「営業する」「TO DO リストを書く」「電話する」等の単なる仕事のノウハウのようなものもあり,少々書きすぎだと感じた(本書ではアウトプットを「行動する」まで含めて広義に定義しているから間違いではないのだろうが,限度があるのでは?).

 第5章ではアウトプット力を高める7つのトレーニング法が紹介され,この章の内容こそが一番自分が知りたかった情報.詳細については後述する.

 総評としては,第2章~第4章が中だるみ感はあったが,第1章と第5章で語られるアウトプットの重要性と具体的なトレーニング方法には共感できる部分が多く,また,新たな知見もあった.一方で,割と分厚い割には,2時間もせずに読める内容で,その大部分を2~4章に費やしているのは残念.

 

【印象的だったフレーズ】 

 インプットすると,脳の中の情報や知識が増えます.しかし,インプットだけでは,現実的な変化は何ひとつ起きません.

 一方,アウトプットは「行動」です.アウトプットして初めて,現実世界に対して変化や影響を与えることができるのです.

 アウトプットの重要性を端的に表している.読書をするだけの「自己満足」ではなく,「自己成長」するためのアウトプットを実践していきたい.

 

「アウトプットする時間がない」という人は,インプットの時間を減らすことをおすすめします.…(中略)…アウトプットしないインプットは意味がないのです.(p.234-235) 

 アウトプットできないなら新たなインプットはしない.そのくらいアウトプットは重要なのだと意識していきたい.

 

 私がいつも使っている読書感想テンプレートは,極めてシンプルです.

 「ビフォー」+「気付き」+「TO DO」,これだけです.(p.250) 

 読書感想で「ビフォー」+「アフター」の視点というのはあまり意識したことがなかった.このようなテンプレ的な構成を押さえていることはシンプルで要点を捉えた感想を表現するのに必須だろう.ぜひ今後活用していきたい.(はい!テンプレ通りの文章!)