財政の果たすべき3つの役割とは何か?【財政学】
はじめに
本記事では、土居丈朗 著「入門|財政学」を参考に、財政の機能について整理します。
財政が果たすべき役割としては、資源配分機能、所得再分配機能、経済安定機能の3つの機能があるとされています。以下、それぞれについて解説していきます。
資源配分機能
1つ目の機能は、資源配分機能です。
通常は、民間の経済主体の市場を通じた経済活動によって、必要なところ(家計、企業、政府など)に十分な経済資源(労働、資本、土地など)が行き渡るように調整されますが、中には、民間の経済主体だけでは資源配分が必ずしもうまくいかない(=パレート最適にならない)場合があります。こうした状況を市場の失敗と呼びます。
市場の失敗が起きる場合、行政サービスを提供する形で経済資源をよりよく配分することが求められます。こうした機能を、政府による資源配分機能と呼びます。
資源配分機能の具体例としては以下のものがあります。
公共財の供給
公共財とは、非排除性と非競合性を持つ財・サービスをいいます。
- 非排除性:財やサービスの対価を支払わなかった人でもその財・サービスが消費できる性質
- 非競合性:ある人が財やサービスを消費したとしても、他の人々の全く同じ財やサービスの消費を減らすことがない性質
公共財の中でも、非排除性または非競合性の度合いが弱い財を準公共財と呼びます。
【準公共財の具体例】
- 有料道路(料金を支払わない人は利用できないため排除的だが、非競合的)
一方、非排除的かつ非競合的な財を、厳密には純粋公共財と呼びます。
【純粋公共財の具体例】
- 警察(防犯)
- 消防
- 国防
- 公園
公共財は非排除性を持っているため、対価を支払わない人でも公共財を消費できます。そのため、故意に対価を支払わずに公共財を消費しようとする人を阻止できず、これをフリーライダー問題といいます。
フリーライダー(ただ乗り)問題が生じるため、公共財は市場メカニズムで供給すると市場の失敗を起こします。このため、公共財は政府がいかに適切に供給するかが重要になります。
外部性
ある経済主体から別の経済主体に市場取引を通じないで便益や損害を及ぼす現象を外部性(externality)といいます。便益を与える現象を外部経済(external economy)、損害を与える現象を外部不経済(external diseconomy)といいます。
外部性のある財やサービスは、市場取引を通さないため、便益や損害に相当する価値が市場での価格に反映できず、市場の失敗が生じます。
【外部経済の例】
・借景(近隣の景観から得る便益)
・産業集積(複数の企業が近隣に集まることで生産性が高まる効果)
【外部不経済の例】
・大気汚染や水質汚濁などの公害
・地球温暖化に伴う地球環境の悪化
外部性による市場の失敗は、政府が適切に介入することで是正することができます。
税金や補助金などの政策によって、外部性の効果を経済主体に認識させて市場の失敗を是正することを、内部化といいます。
【具体例】
- 環境税
- 炭素税
価値財
必ずしも家計は好まないが、社会的にみて家計が適切に消費することが望ましいと考えられる財・サービスを、価値財(merit goods)と呼びます。
価値財は、家計が自発的に消費しない場合には、政府が強制も含めて家計に供給することが、社会全体でみて望ましいことになります。
【具体例】
- 義務教育
- 健康診断
- (強制加入の)公的年金
- 麻薬の禁止
所得再分配機能
2つ目の機能は、所得再分配機能です。
所得の再分配とは、個人間の所得格差を、所得分配が公平になるように調整することです。
政府が、所得が多い人ほど多くの税金を取り、所得の少ない人ほど多くの補助金を出すと、再分配後の所得格差は小さくなります。
【具体例】
経済安定機能
3つ目の機能は、経済安定機能です。
政策によって景気を安定させることを経済の安定化といいます。
経済安定化機能の例として、次のものがあります。
まとめ
本記事では財政の果たす3つの機能を、それぞれの具体例とともにまとめました。
- 資源配分機能:市場の失敗に対して介入し、資源をよりよく配分する。
- 所得再分配機能:所得格差が公平になるように再分配により調整する。
- 経済安定機能:政策によって景気を安定させる。
市場だけに任せていると社会が適切に機能しないところに対して財政が働いているということがよくわかりますね。