このくにのかたち(物理)

まちづくりやインフラの観点から日本について考察したい人間の雑記

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【読書録】君主論

君主論 (岩波文庫)

君主論 (岩波文庫)

 

概要

 古典をしっかりと読んでみたいと思い,手に取った「君主論」.著者のマキアヴェッリが「君主はどう振舞うべきか」について示したこの本からは,現代にも通ずるリーダーとしての心構えを学ぶことができる.極力原著に忠実に翻訳したというこの日本語版は,独特の言い回しも多く,難解ではあったが,その分マキアヴェッリの考えの筋道を辿って理解することができるものとなっている.

 「君主論」の特徴は,過去の君主たちの行動の事例をつぶさに調べ,現実的かつ冷静にそれらを批評し,あるべき君主像を示していることだろう.君主のとった行動により,臣下や民衆がどのように考え,行動するのか,そしてそれが君主にどのような顛末をもたらすのかについて明らかにし,ありありと描き出している.

 以下,特に印象的だった箇所を備忘録として引用する.

備忘録

(前略)いかに人がいま生きているのかと,いかに人が生きるべきなのかとのあいだには,非常な隔たりがあるので,なすべきことを重んずるあまりに,いまなされていることを軽んずる者は,みずからの存続よりも,むしろ破滅を学んでいるのだから.なぜならば, すべての面において善い活動をしたいと願う人間は,たくさんの善からぬ者たちのあいだにあって破滅するしかないのだから.そこで必要なのは,君主がみずからの地位を保持したければ,善からぬ者にもなり得るわざを身につけ,必要に応じてそれを使ったり使わなかったりすることだ.(第15章,p.115~116)

 

 君主が真の味方であり真の敵になるとき,すなわち,何の憚りもなく,一方に味方し他方に敵対する態度を明確に示すとき,その場合にも君主は尊敬される.このように旗幟を鮮明にする態度は,中立を守ることなどよりも,つねに,はるかに有用である.(後略)(第21章,p.165)

 

君主たるものは,それゆえ,つねに助言を求めなければならない.が,それは,自分が望むときであって,他人が望むときではない.そればかりか,何事であれ,自分に対して助言をしようなどという気持を,誰にも起こさせてはならない. とくに,こちらから,訊ねないかぎりは.だが,彼のほうは,あくまでも幅広い質問者でなければならない.そればかりか,誰かが,誰かに対する遠慮から,真実を言おうとしないことに気づいたときには,怒りさえ露わにしなければならない.(後略)(第23章,p.177)